setofuumiのblog

格ゲーを見ます

鉄拳8の大会で中国のプレイヤーが失格になった話の見方

タイのTGUにおいて起きた事象を格ゲー大会をまあまあ見ている視点から書きます。
おもに参照されたであろうAutomaton記事

『鉄拳8』公式国際大会にて、勝者側の準々決勝まで勝ち進んだ中国選手が失格処分に。ルール上参加資格がなかったとして - AUTOMATON

後日の公式の発表をうけての格ゲーチェッカー記事

『鉄拳8』TWT予選中に失格となった中国XCC選手について、最終予選への招待が発表に。ルールも変更へ

まず前提として
「現場でどのように失格処理がなされたのか」
「実際にどのような経緯(意思決定)で失格に至ったのか」
に関してはわからないので不明とします。
ニュースへの反応において(格ゲーチェッカーコメント欄ですら)格ゲー大会の実態とは異なった理解がされているな、という点からの内容になります。

 

できごと

TWT認定大会・タイTGUでtop8直前(top16ウィナーズ)まで勝ち進んでいたプレイヤーXCCが失格処理(DQ)をされた。中国勢で、TWTルールでは中国が参加地域となっていない、という理由によって失格にされたとされる。
後日公式発表でルール改定ならびに日本開催のLCQへのサポートを行うということになった。


反応

XCCは豪州のチーム(TeamEssence)のサポートを受けており、そのチームに関わる豪州勢プレイヤーや、格ゲー大会に深く関わる運営・実況などからも失格の裁定はおかしい、という意見が多く表明された。
またこれに抗議するsteamのレビュー投稿は実際に起こっている(多くが簡体字での投稿)が、レビュー全体では英語圏の「反マイクロトランザクション」勢力の方が多く、この大会の1週間前の平八実装時にもかなりのレビューが投下されている。(これもまた後日"改善"されることになったが

『鉄拳8』キャラYear1パスに次期ステージDLC追加、鉄拳コイン全員に配布へ。有料ステージ配信めぐり


ポイント1「TGUはどんな大会なのか」

「TGU:ThaigerUpperCut」は"鉄拳8の公式国際大会"と書かれているが実際は「タイで年に1回開催される複数の格ゲーからなる大会」であり、これに「鉄拳TWTの公認(予選)」がくっ付いている形式。もちろん主催・運営はタイのTGU自体が行っており、「鉄拳のための大会」でも「バンナムのための大会」でもない。「公式」と呼ばれる格ゲー大会というのはそのほとんどがこの形式で成り立っている。Evoもそう。

タイTGU自体のルールには国籍・在住地に関する記述はなく、過去に中国人プレイヤーが遠征参加しSF,KOFなどで活躍することもあった。
このことから「タイ運営が現場で(本大会ルールではなく)TWTルールによって失格にした」とみるのが妥当かと思う。


ポイント2「中国は除外されている」の意味

TWTルール上の文面で除外されている(いた)のは事実。
ただその除外とはどういう意味なのか?が問題

1.はっきりとした禁止
様々なゲームで情勢的に国を代表した出場が禁止されることはあり、今回取りざたされたTWTルール上の区分にも全てではないにしろこのような禁止地域は含まれていると思われる。
FPS系ではロシアが強豪地域なので実際に色々なケースがある

ロシア『Gambit Esports』のメンバーたちが『VALORANT Champions Tour』に中立チーム「M3 Champions」として出場へ – Negitaku.org esports

 

ロシア「Virtus.pro」と「Gambit Esports」がCS:GO『PGL Major Antwerp 2022』予選・本戦 出場不可に、選手は中立な立場での参戦を許可 – Negitaku.org esports

 

2.ツアーの地域分けシステム/オンライン大会基準としての除外
今回注目されたルールは「地域分けに入っていない」ことが問題になったわけだが、昨今の格ゲー公式ツアールールは「広範囲のオープン・オンライン大会」や「分割した地域ごとの代表枠」などを背景に地域分けを非常に厳密に行っていることが多く、これは鉄拳だけではない。
そしてその際に中国が除外されたり、他と交わらない独立した1地域にされたり…というケースが多いのは事実(他の格ゲーでもある)。だが、これはあくまで「オンライン・地域分け・地域代表枠を設定することが難しい」というだけのことであり、出場を禁止する類のものではなくオープンなオフライン大会(EVOなど)に関わる記述ではない、と読むのが妥当だし今回までそのような事例はなかった。

この1,2どちらなのか?という話はある。後日の公式発表を見るに「(少なくとも中国は)2のつもりだったが1の運用がされてしまったので改定するよ」とみるのが妥当なのかなと思う。
ただ2のルールが実際かなり厳密に書かれているため*1"禁止"、"除外"のようなニュアンス、解釈を許すことになったのも確かにあるかもね、といったところ

 

余談

若干異なるが「優秀な成績をおさめたがルール上出られない」の話をするならば年齢規定に引っかかって出場ナシというのは実際にある。
2017年 SFV_Redbull北米イベント
・北米の各地域の予選会(対戦会)の成績優秀者が3人地域代表になるシステムだったが、3位のChrisCCHが年齢のため除外、決勝大会に出れず。
2022年 DBFZツアー北米代表
・DBFZ公式ツアーにおいて予選大会で上位になり、北米西部代表の権利を持っていたGarlicBreadが年齢のため除外、決勝大会に出れず。
これらは「予選大会に出ること」は別に禁止されていないし、予選大会は現地の運営がやっている。ということでなおさら今回の件は異質。

*1:オンラインや地域枠を巡る大会の場合を考えると厳密に書かざるを得ないのだろうが