setofuumiのblog

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サウジアラビアのEsportsWorldCupのクラブチャンピオンシップとそれに伴うチーム所属の解説

EWCに伴う所属

2024年6月現在、TK8,SF6のプレイヤーがこれまで格ゲー部門を持っていなかったいわゆる「国際的大手eスポーツチーム」に続々所属しており、これはサウジアラビアの「esportsWorldCup(EWC)」に伴うものだとされている。その格ゲー視点からの解説。
詳細はEWC公式Twitter上の「記事」にあるのでそれへのリンクとする(英語)

1.サウジアラビアEWC


https://x.com/ESWCgg/status/1780219657003078100
https://kakuge-checker.com/topic/view/08397/

これの存在は皆さんご存じということで省略する。総額60Mドル(150換算で90億円。以下「M$」で書く)の大会ということで話題になっている。
なお60M$の内訳はざっくり書くと
20M$:「クラブチャンピオンシップ」
30M$:「各ゲーム賞金(格ゲーは個人種目のため総額1Mドル)」
10M$:「予選大会へのボーナスおよび本戦でのMVP,アワード」

60M$の半分の30M$が各ゲームに分配され、かつ人数割りされているので実はゲーム単体の賞金としては過去最高というわけではなかったりする*1


2.クラブチャンピオンシップ


https://x.com/ESWCgg/status/1790759165180215506

20/60M$はこのクラブチャンピオンシップの賞金で、システムとしては
・各ゲームのTop8に入賞ポイント、その結果で上位16チームに賞金。
・条件1:2つ以上のゲームでTop8入賞(ポイント獲得)
・条件2:「優勝」のためには1位獲得必須(ポイント1位でも何かで1位獲得していなければ2位に格下げ)
というものになる。
ざっくりいうと「複数のゲーム部門を所有できる大手チームはこれで上位に行けるようより一層頑張ってね」ということ。

なおこのクラブチャンピオンシップに関する移籍・所属は6/13までとされ*2、DreamHackSummer直前での締め切りとなった。


3.特定の大手クラブへの支援


https://x.com/EWC_EN/status/1787467602232508731
冒頭の画像はこれを加工したもの。
この選出された30のクラブ(チーム)にはEWC運営から支援(数千万円?)を受けることができ、それでより一層esports組織として拡大、ひいてはEWCに臨んでください、という内容。

4.格ゲー部門への参入


この2と3があったため
「今まで格ゲー部門を持っていなかった大手チームが」
「クラブチャンピオンシップのために」
「支援金で」
格ゲー部門を新設することになった…というのが大方の見方になる。

5.JIYUNA投稿/これまでの格ゲー部門参入の歴史


これらを受けてJIYUNA(日本在住のアメリカ人格ゲーマー。各種運営としても古くから格ゲーに関わっている人)が発言したのがこれ(英語。翻訳可)
https://x.com/jiyunaJP/status/1801445030638588311
1~4の内容をおさえつつ「チームに使い捨てられるようなことはないように」と主張したもの。ちなみに投稿時点でもう移籍期限ギリギリだったが。

これはサウジの金が…という以上に「今まで大手チームは格ゲー部門を持っていない/無視してきたから」という点に力点が置かれていると感じる。
冒頭の画像で元から所属していた人は*付きで書いたが、サウジ資本、香港の地縁が強いTalon以外はほぼ存在しないと言っていい。LiquidやCloud9などの北米チームはスマブラに参入しつつ断続的に格ゲー部門も持っていたとはいえるが…*3
日本視点だと「EGやEchoFoxがあったよね?」という感じだが、この2つは他が参入していないがゆえに大量獲得するという流れがあり今では結局なくなってしまった*4
また今回の参入で大量の鉄拳・韓国勢がプロチーム入りしたが、韓国の鉄拳も「大手プロチーム」には長い間無視されてきた存在でもある。2017年に北米のEchoFoxがJDCR,Saintの2名を獲得し世界大会を席捲、またKneeが韓国チームのROX(現在のDRX)に所属、となるまではほぼプロ契約が存在しなかったし、それに続くのは韓国国内での「AfreecaTekkenLeague(ATL)」が2020年から本格化するのを待たないといけなかった。「esportsシーン」「大手有名チーム」がしっかりと存在する韓国で、である。
こういった経緯があるので「サウジのためだけに急に突然参入してきた」という印象は拭えない、といったところだろう。
なおこの流れで日本勢が獲得されることはなかったが、これは既に日本国内でプロシーンが出来上がっていた(大部分が"チーム"に所属済みであった)部分が大きそうである。国際的な実績のあるZETA DIVISIONが鉄拳部門へ参入、さらに他ジャンルも次々に設立したのはこれの関係では…と深読みできるくらいだろうか。


6.「スポーツウォッシング」への批判


https://www.negitaku.org/news/n-26468
negitakuのこの記事が割と反応を呼んだ話題。

"スポーツウォッシング(sportswashing)は特定の個人・団体・国家がスポーツを利用して、自身のイメージを向上や問題の隠ぺいを図る行為。"


「esportsAwards」がサウジに組み込まれたことにより出演拒否等が起こった件。これはAwardsという特性上「個人でのイベントへの出演・関与」が避けられないため表面化したといえる。ゲームならばあくまで「ゲームの1大会に出場するだけ」といえるがそうも言えない形態だったということだろう。これは個人の信念やプライドの問題なのでそういう話もあるんだね、といったところ。
なお格ゲー視点だと北米のSajamとSonicFoxがこの流れに準ずる発言をしている。*5*6

7.おわりに


こういったことがこの数か月間のいきさつ。
そしてクラブチャンピオンシップの移籍制限が終わり、8枠のDreamHackSummerが終わり、あとはわずかの予選ののち本戦・LCQを残すのみ…というのが今現在の状況になる。
あれやこれやがあるが、デカいイベントなのは間違いないので前提を踏まえつつ見て楽しんでいけたらいいですね、といったところ。

*1:格ゲー視点だと格ゲーに絞って開催された前年のGamers8と同額、PrizepoolとしてはCapcomCupのほうが上

*2:当初は5/31だったが延長

*3:ここはTSMやCLGを含めて色々な歴史があるが割愛

*4:なお今はFlyQuestというチームはほぼ同じ方針で動いており、数年前にPunk,Tempestなどを一挙に獲得した

*5:https://x.com/Sajam/status/1800355574254817390

*6:https://x.com/SonicFox/status/1800837210297778463