setofuumiのblog

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トーナメントのシードついて

シードについて

*おもにsfv・北米大会の知識をもとにして書く
*特に結論はない。こういう風にできているよ、という内容
*基本的な理屈・実際の運用・今年起った問題の3つ

 

「基本的な理屈」

こういう感じのやつ

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sample


日常的に言われる「シード」だと「1回戦bye(不戦勝)」の意味合いが強いが、要するにトナメ表においてどう配置されるかが決まる順番のこと。
*人数上の端数から結果的にそういう格好になったり、運営判断で上位シード者を意図的に1回戦byeにすることは当然ある
ちゃんと専門用語化しているものとしてはテニスの「ドロー」というのがある(検索すると色々説明しているページもある)

完成形だけ見ると「合計17になるように並ぶ」としか言えないが、理屈としては「1と2を置く」→「3と4では3を優先し4をキツい方に置くので14-23とする」→「4-8は同じ理屈で8の人は1と当たり、7の人は2と当たる」→「9ー16では…」といった感じ。

*なおあまり見たことは無いが、運用によってはここでいう「3と4」「4-8」「9-16」という部分の枠内でランダムにしてバラけさせる、という手法もあるようだ。
またランダムではなく「1-8」を並べた後の「9-16」を折り返さずに「1対9,2対10,3対11...」と並べていく手法もなくはない。ただこれをやると「上側がキツく下側は楽」というのが露骨になってしまうのであまり採用されない。


全てランダムなのが大会として真!という主張の人もいるかもしれないが、この形式がスタンダードでバランスのよいものとされており、ChallongeやSmashGGといったトーナメントページ作成でも基本このようになる。
「優勝候補2名が1回戦で当たらず、なるべく遠くで当たる(3番目以降も同様)」というのが参加者の満足、視聴者の楽しさの点で良いことである…という前提でこうなっているといったところだろうか。

 

「実際の運用」

128人トーナメントの場合、前述の理屈から「1番目」と1回戦で当たるのはシード128番目の人という事になる。これは運営が「よし、この人が128番目の強さの人だな!」と判断して配置する

んなわけはなく、一定のシードを割り振った後は「ノーシードでランダム」とされることがほとんど。16や32くらいならともかく、100人200人に運営がいちいち判断して番号振り分けなんてのは現実的でない*1

また、このように配置した上でさらに「参加者からのフィードバックによる場所移動」が格ゲー大会においては慣例化している。ほとんどの場合は「同じ地域の遠征者があまりにも早期に当たる」「会場到着時間的に前半の位置は厳しい」「そもそもシード付け(上位候補)の順位がおかしい」あたり。
これは「公平さ」という点では議論の余地があるところだが*2、ここは「参加者の満足」をより優先して運営が手間をかけて努力している部分であり、格ゲーのオープン大会文化が持つ良いところと言えるのではないかなと自分は思っている*3
なおこのフィードバックの工程は運営側にもけっこうな負担なようで、当日・直前エントリーの有無なども含めて「どこまでやるか」が定期的に議論されている。過去には「移動を申請した人の大部分はかなり早く敗退するデータがあるので配慮不要では?」という意見が出ることもあった。


「CPT」
ときおり「その年の直近の大会の成績"のみ"に従ってシードが決まる」(あるいはその年で好成績を取れば即・次大会からシード上位が約束される)という主張があるが、結論から言うとこれは
「Evo(とEvo以降)、および一部の序盤R大会」に限られる
*Evoはほぼ間違いなくその年の成績が参照される。人数が膨大なので機械的に処理できないと無理なのもあるだろう。

今年Punkが「(2019初回)プレミア優勝したのにこの位置なの?」的なことを言っていたが前年成績を参照すると20番目付近の位置になるのでしょうがないところはある。
おフランスでは"前年成績+直近成績による運営補正の合計"という組み方をしてそれなりな位置に置かれた(ただし明らかにミスってた部分もあった。後述)。あとフランスのプレミアは欧州開幕戦みたいなものだったので地元欧州勢は過去実績しか参照するものがない。


北米プレミアに関してだと、FinalRoundは「参照する直近成績」がないので過去実績で組まれる(前年とは限らない)、というのは当然として、2018まではNCR、ComboBreaker、そしてEvo直前のCEOですらも「過去(前年だけでない)実績を考慮した運営独自のシード」を組んでいた(調査結果は長くなるので書かないがウェイバックマシンとSmashggで誰でも確認できる)
FR2019,NCR2019に関しては運営独自だったこれまでとは異なり「前年のみ」になっていた。CB,CEOがこれを踏襲するかはまだ不明。なおNCRはFRと同様に前年のみで組んだのだが移動で明らかにミスっていたので色々変なことになった(後述)


そもそもEvo前の時期は「リージョン内では数回しか大会をやっていない」「まだ大会に参加していない強豪、地元強豪が一定数いる」という状況なわけで、それらの場合参照するものは「過去実績」以外ない。

ただ例外としてアジアランキングは最序盤でも"既に大会に出て結果が出ている人"が異常に多くなるので直近参照になることが多い傾向はある。そうなったとしてもシードとかどうでもいいほどヤバい当たり方になるのがアジアランキングなのだが…(今週のサイゴンはまんまそんな感じ。直近成績のみで組まれているがあまりシードの意味がないほどの密度だし、下位シードノーシードでもワールドクラスがたくさんいる)


「今年ちょっとおかしかった問題について」
一応前提として独自のシード付けおよびsmashggやchallongeの入力は結局のところ運営の人の手で行われるわけで、そこでエラーは発生することはある。これはしょうがない。
そのうえで、今年明らかにミスっぽいがフィードバックで突っ込まれなかったのかなのかちょっと歪になってしまった例があるので解説。

「NCR2019のProblemXのズレ」
上側シード16名、下側シード16名は前年GP上位32名になっている

NCR2019(カッコ内は出場者中前年成績順位)(ブロックごとのシード順)
(1)とき(18)マゴ
(2)ふじ(19)Punk
(4)ふー(22)Verlo  ←3番目のブロック
(5)Sako(24)ゲマビ

(6)Jwong(25)ジョン竹
(7)NL(20)板ザン
(8)石油(21)ももち
(9)Du(26)どぐら

(10)ウメ(27)Momi
(11)ハイタニ(28)Smug
(12)シャオハイ(23)ネモ
(13)Phenom(29)CoolKid

(14)ガチ(30)Samurai
(15)Xian(31)もけ
(3)ProX(16)CJ  ←15番目のブロック
(17)ボン(32)まちゃ

…のだが、本来なら3番目のProblemXが何らかの都合で「15番」の位置に移動している。
なお17~32はあまり順番通りになっておらず、かつ折り返しナシの傾向がある。運営判断なのかもしくはXのズレで変になっちゃったか。

時間都合などで最後の組に移動、ということ自体は普通にあることなのだが、どうやら組み合わせを考えずにProblemXひとりだけを単に移動させてしまったので以降の人が全部ズレることになったと思われる。そして本来「15番」と当たるのは「2番」なので、プールを抜けると「2番vs実質3番」ということになってしまった…という。
ProblemXは普通なら3番だったので、本来プール後にあたる「3対14」のところ、つまり14番の組とそっくりそのまま入れ替えれば適正になっていたと思われる。
なおPunkは前年成績だと出場者中19番、下側シードの位置なので特別おかしいわけではない。


「MixUp(フランス)の独自シード」
フランスではNCRのPunkの意見を取り入れたのか何なのか、「直近の成績をプレミア換算して追加」という方式を取った。これによりPunkだけでなくももちも上位に。

MixUp(かっこ内は前年順位、*の2人はプレミア優勝ぶん加算でジャンプアップ)

(1)ときど vs (6)NL
(*)ももち vs (8)ウメハラ

(4)ふーど vs (11)Phenom
(5)Sako  vs (12)Xian

(2)藤村  vs (14)板ザン 
(7)石油王 vs (9)Luffy

(3)ProX  vs (13)マゴ
(*)Punk  vs (10)ハイタニ

ここでちょっとおかしいのがNLで、Punk,ももちが上位8名入り、さらにEvoJPで石油王の方が上だったのでNLと入れ替わり、前年総合7位のNLが「1-8」の第一シードから転落したのは理解できる。
なのだが、「1番」のときどと当たる位置は「16番」なわけで、この並びで「9-16」グループのこの並びの中でNLが16番の位置なのは明らかにおかしい。2番3番は「9-16」の中の下位と当たっているので折り返しナシでもない。順位参照ミスなのか、移動してたら勝手にこうなったのかわからないが謎。
おフランス運営は頑張って「GP持ち」にすべてシード番号を割り振るように組んだのだが(偉い)、Evo9位200P (今年ルールでも100P)を持っているはずのりゅうせいがノーシードになっていた。過去にもこの「Evo9位参照抜け」はあったような気がするので、データベース的に何かおかしいところがあるのかもしれない。

 

おわりに

CPTランキングを参照しながら書いたが、このような参照できるランキングがない種目ももちろんあるし、あったとしても「参照の仕方」で何通りでもシードは決められる。結局のところ運営判断が大部分なうえに人の手にミスはあるので、運営頑張ってくださいといったとろ。

*1:例外としてEvoJPでそれに近いことがあったりなかったりしたらしいが…

*2:一応過去に北米において「意図的に同チームの参加者の位置を離した」と判断・裁定されてメーカー側からペナルティを食った大会もある

*3:プレイヤーの中にはこれ自体を不正なこと、利益を得るためにやることのように表現する人が一定数いるが正直嫌な気分になる