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「ウメハラはプロシーンにいない」から考える格ゲー大会シーン解説

昨年11月に開催されたSF6_KZHCUPのプレ配信を見ていて「ウメハラさんはプロシーンにいない」という発言があった

 

www.youtube.com

 

これは明らかに「SFL_JP2023」に出ていない、という意味なんだけど、言葉通りだとなんか引退したかのような言葉になってしまうのでおかしみがあった。おわり。

 

 

で、よく考えると「国内リーグに出ること=プロシーン」というのは他のゲームでも他の競技でも別に不自然ではないわけだし、それってどういうことなの?ということを改めて書いてみようという試み。以下個人の感想です。


第1部:じゃあ「プロシーン」とは何なの?

すごく単純にいうと格ゲーは個人競技なので「団体戦」であるSFL_JPとは違う「個人戦のシーン」がある。そしてSF6の個人戦は先日開催された「CapcomCup」をめぐるものであり、その予選大会に出る、というのが1年のシーズン・大会シーンを形作っている…というのが一般的な解説になるだろう。

「一般的な」と書いたのはそうではない部分が多分にあるからなのだが、長くなるのでそれは後回しにして、表題のウメハラさんは今年度それにおいてどうだったのか?を見てみよう

CapcomCup2023に関する大会は
オフラインプレミア=「公式のオフライン大会」 世界全体で3大会で3枠
オンラインプレミア=「オンライン・日本予選」 1枠一発勝負の代表決定戦
WorldWarrior=「オンライン・日本地域予選」 上記とは違い地域のコミュニティが開催する5回の予選からの決勝大会で1枠の代表者を決める方式
LCQ(LastChanceQualifier)=いわゆる当日予選で自由参加で1枠
の4種類となる

ウメハラさんの2023-2024シーズン
https://www.start.gg/user/7f5507aa/results
https://liquipedia.net/fighters/Daigo_Umehara


33位 Evolution2023
09位 フランスCPTオフライン
17位 シンガポールCPTオフライン
13位 日本cptオンライン
総合21位 日本WorldWarrior予選ランキング(top8が1回)
https://www.ntte-sports.co.jp/dcms_html/cptww2023/index.html
17位 CapcomCup_LCQ

これが2023-2024年度の結果で、出場は全部しているしtop8は1回だけなものの上位争いは普通にしている。
限られた数の個人戦の順位というのはまあまあ不安定なものなのでこれでどれくらい高いのか?を言葉で説明するのはなかなか難しいが、SFL-JP2023が9*4の36名、2024は12*4の48名(予定)、他のチーム系ゲームでも「国内リーグ」に出場するのは20~40名程度と考えるとまあそこのレンジには入ってるよね、という順位ではあるだろう。
ちなみにじゃあなんでSFL2023には出なかったの?というのはウメハラさん個人にしか答えようがないが、SFLJPは選手選択や所属が他ゲームと比べて割とゆるいことが一因ではあるだろう(これは別に悪いことではないと思うが)


第2部:「格ゲー大会シーン」

CapcomCup=プロシーンというのはおおむね合っているのだが…の部分。
端的に言うと「CapcomCup以外の大会も重要視されるし、ゲームタイトルやその年によってかなり変化する。それを含めて大会シーンというものがある」という感じ。
以下に10年くらい大会を見てきての空気感というか雰囲気のようなものの例をあげる。またウメハラさんの話から繋げるので基本SFの話をベースとする。


・何がシーンなのか
SF6においてCapcomCup出場に関わるものが「シーン」を形作っている…と書いたが、これは「メーカーの公式大会だから」「賞金が高いから」とかもっともらしい理由はあるものの「ここ数年で(おもにSF界隈のプロ化により)なんとなくそうなった」雰囲気による。言ってしまえば雰囲気でしかないともいえる。
今まで書いてきたことをひっくり返すようだが、雰囲気としては2023で「国内のSFLこそに注力・注目するべき」という雰囲気もだいぶ醸成されたように感じる。

・CapcomCup,SFL以外の例

割と重要なので書いておくが以下の例はほとんどが「SFL,CapcomCupが存在しないときからずっとあるもの」であり、ウメハラさんなんかはその間もプロで居続けた、という点。

Evolution
わかりやすい別なものとしては格ゲーの大会にはアメリカの「Evo」という超デカい大会があり、これはいわゆる「カプコンの公式大会」ではない。ただ単にデカい格ゲーの大会である*1が、Evoこそが一番大事な大会だ、それを中心にシーンがある…と答える人も今でもいるだろうし、開催地の北米ではなおさらそうだろう。ウメハラさんがスト3,スト4で活躍した時代は完全にこれにあたる。


闘劇
「Evoはすげえ」となるのに前後して日本国内では「闘劇」があったわけで、「いや日本でやる闘劇の方が重要でしょ」というのが当たり前だが主流だった。過去形。

日本国内の公式大会
これは昔も今もずっとあるもので説明は不要だろう。近年はものによっては「世界全体での認定大会のひとつ」という扱いになることもあるものの重要な大会とされるのは全く変わっていない。ここはコロナの影響でいまだにオン化して復活していないメーカーもある(カプコンSFもそう)。

EvoJapan
EvoJPは必ずしも「EvoだからEvoと同等」という扱いになっているわけではなく、あくまで日本で開催される一大会という扱いが多く感じる。その上で単純な規模感からの重要視であるとか、公式公認システム(次の項目で書く)であるとか、実質的な国内最大大会としての扱いであるとかその時々・種目によっていろいろな捉えられ方をしている。海外からの遠征も各々の価値判断の結果多かったり少なかったりする。


独自の大会(日本・海外問わず)
Evoが象徴的な存在なのでEvoが…という話になりがちだが、これは「Evoみたいな公式ではない独自のデカい大会」がいっぱいあった中でEvoがもっとも成長したということで、「そういう大会」がいっぱいあるのが格ゲーではデフォ。
さらにいうとカプコンCPTだけでなく格ゲー主要タイトルはほとんど「世界各地でいっぱいある大会」をメーカーが「公認」することで公式決勝への予選にする…という方式を取っている。
2019年までの数年間はそれ(公認)が主流になり、「プロシーン」の雰囲気を形成していた感覚がある。
またこの公認システムによってその大会が「公式大会」のように思われがちだが、大会にはそれぞれの大会ごとの歴史や文脈があり、そもそもその大会をやりたい人が運営して開催しているものがほとんどである。
なおコロナ禍でこの流れは2019年を最後に一旦中断されたが、オフ大会の開催自体は今はほとんどが復活している。2023-2024年度で「認定」を2019までの通りに復活させたのは鉄拳のバンナム系のみだったが、来季はさすがに違った感じになるとは思う。

独自の大会の一部(公式関係なし)
これも国内国外問わず、大きく扱われる「公式大会」が存在しないゲーム、Evoのメイン種目には採用されないゲーム等でも「ある一つの大会」をめぐってシーンが形成されることはある。というかこれがかなり多い。
今年度はEvoで採用されたが「ストⅢ3rd」の最大の大会は独自大会のクーペレーションカップ(5on)だし、北米だと「スカルガールズ」の最も重要な大会は5月に開催される「ComboBreaker」だとされ、今年度は公式世界大会決勝もこの大会内イベントとして行われることが決定している(日本からも代表が参加する)。

各種ローカル大会・対戦会
ここまでは超デカいものの例を挙げてきたが、当然長距離の遠征の発生しない規模の大会、対戦会、オンライン大会は毎週開催され無数にある。そこでもまたその規模なりの「シーン」があるし、上に挙げてきた大規模大会ではそのシーンとシーンとが激突したりするところに面白さが生まれる…というのが大会の根源的な面白さだと感じている。

 

こういったものが色々と絡み合いながら「大会シーン」はできている…と自分は感じている。SFLやEvoなどから観戦を始めた人は、こういういろいろな要素を知ったり触れてみるとデカい大会を見るのがより一層楽しくなるんじゃないかなと思う(海外大会はやや難易度が高いけど)。

*1:年々巨大化してメーカーと接近したこと、およびいろいろあってSonyに買収されて"ただの"には留保が付くことにはなったが、根本は格ゲーメーカーのものではない